• 桑野 健介

62%の鉄筋不足。マンション全体で7,000本以上の鉄筋不足!区分所有者が西鉄らを提訴~恐怖のマンション「パークサンリヤン大橋」


 九州の私鉄の雄・西日本鉄道(以下「西鉄」)は、鉄道・バス事業、ホテル事業などの他、福岡都市圏などに分譲マンション「サンリヤン」シリーズを展開し、176棟計8,890戸(202041日時点)の供給実績を誇る、西鉄が分譲した福岡市南区のマンション「パークサンリヤン大橋」(013月竣工)において、違法で不適切な設計に起因する耐震強度不足と、柱の鉄筋不足(マンション全体で7,137本)が判明した。

 

区分所有者が提訴

 マンションの耐震強度不足や鉄筋不足を知らされずに購入した区分所有者の1人は、設計を行った福永博建築研究所、施工を行った西鉄建設、分譲を行った西鉄などを相手取って、11月19日、5,031万円を求める損害賠償請求を提訴した(原告代理人は小橋総合法律事務所・小橋弘房弁護士)。


 被告は、元請設計事務所の(株)福永博建築研究所および代表者で管理建築士の福永博(以下、敬称略)、構造設計を行った(有)松藤構造設計および代表者の松藤嗣寛、施工を行った西鉄建設(株)、分譲を行った西日本鉄道(株)の6者。


 訴状によれば、鉄骨鉄筋コンクリート造(以下、SRC造)である「パークサンリヤン大橋」の耐震壁方向には鉄骨が配置されていないので、構造計算(保有水平耐力計算)は鉄筋コンクリート造(以下、RC造)の係数を用いなければならないところ、不正なSRC造の係数を用いたため、耐震強度が不足する違法な状態となっている。

 

 また、建築基準法施行令に定められた RC造の柱に最低限必要な鉄筋量に対して62%もの鉄筋量不足となっている。



驚がくの鉄筋量不足

 このマンションの裁判に関して、今後詳細に報じていく。今回は驚愕の鉄筋量不足について報じたい。


 耐震壁方向に鉄骨が配置されていない柱においては、当然のことながら、柱の鉄筋量も鉄筋コンクリート造の基準を満たさなくてはならない。このマンションの柱符号2C4(2階)を例に挙げれば、柱断面が115cm×115cm、柱主筋が8-D25(鉄筋D25・1本の断面積:5.07cm2)となっている。


 建築基準法施行令第77条6項は「主筋の断面積の和は、コンクリートの断面積の0.8パーセント以上とすること」定めている。


 日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算基準」においては「コンクリート全断面積に対する主筋全断面積の割合は0.8%以上とする。ただし、コンクリートの断面積を必要以上に増大した場合にはこの値を減少させることができる」と定めている(緩和規定は一般的には0.5%以上と解される)。



本件マンション柱2C4のコンクリート断面積は

 115cm×115cm=13,225cm2、主筋断面積の和は 5.07cm2×8本=40.56cm2  40.56cm2/13,225cm2=0.307% < 0.8%・・・NG  0.307/0.8=0.38 ← 62%もの鉄筋不足!

となり、建築基準法施行令第77条6項に違反しており、緩和規定さえも大幅に下回っている。これは、法令違反・注意義務違反の不適切な設計である。


 この柱に本来必要な鉄筋量は105.8cm2であり、同じ鉄筋径(D25)とした場合の本数としては21本以上となるので、21本-8本=13本も不足している。このマンションは4棟(15階建て~12階建て)から構成されており、単純に不足する鉄筋本数に階ごとの柱本数と階数を乗じると、マンション全体で実に7,137本も鉄筋が不足していることになる。7千本以上の鉄筋が不足しているマンションに205世帯の住人が暮らしているのである。


 今回の提訴により、マンションの区分所有者は耐震強度・鉄筋量不足の事実を知ることになる。万が一、このマンションが倒壊するようなことがあれば、近隣の住民や前面道路の歩行者・自動車にも被害をもたらし、マンション区分所有者が加害者となってしまう可能性もある。驚がくの事実を知った区分所有者たちが西鉄に対し何らかの行動を起こす可能性も高く、今後の行方が注目される。


 福岡都市圏などで分譲マンション「サンリヤン」シリーズを展開する西日本鉄道。同社の分譲した福岡市南区のマンション「パークサンリヤン大橋」をめぐり、購入した区分所有者の1人が19日、西鉄を含む設計事務所、建設会社、分譲会社などを相手取り、5031万円を求める損害賠償請求を提訴した。


 訴訟によると、「パークサンリヤン大橋」には違法で不適切な設計に起因する耐震強度不足および柱の鉄筋量の不足が判明している。今後の西鉄ら被告の対応が注目される。


 今回は、この問題を追及してきた桑名健介氏に「パークサンリヤン大橋」の問題点について解説してもらった。


【桑野 健介】

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