• 桑野 健介

アンピール百年橋でも鉄筋不足!


 6月16日掲載のNetIBNewsにおいて、新栄住宅(本社:福岡市)が分譲したアンピールシリーズマンションについて構造設計の偽装があったとして、構造設計一級建築士仲盛昭二氏が分譲会社である新栄住宅に対し質問書を送付したことを報じた「アンピールマンションの設計偽装 仲盛昭二氏が新栄住宅へ質問書を送付!」)。

 質問書の対象となったマンションの1つ「アンピール百年橋」においても、柱の鉄筋量が大幅に不足していることを、仲盛氏が明らかにした。


 「アンピール百年橋」については、6 月に仲盛氏が新栄住宅に送付した質問書において


 (1)1階鉄骨柱脚が非埋め込み型であることを考慮した構造計算が行われていない。

 (2)非埋め込み型柱脚の鉄量(鉄筋量)が規準よりも49%不足している。

 (3)耐震壁方向に鉄骨が配置されていないが不適切な鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の係数により構造計算が行われている。


 上記の3点を指摘している。

 以前、仲盛氏が、アンピール百年橋について新栄住宅に送付した質問は下記の通り。


【質問1】張間方向に鉄骨が存在しない架構を有する場合の保有水平耐力計算における構造特性係数Ds値の不正について

 張間方向に鉄骨が存在しない架構の場合、張間方向の保有水平耐力計算において、低減されたSRC造のDs値(構造特性係数)ではなく、RC造のDs値を用いた計算をしなければ法令規準違反になります。しかし、アンピール百年橋では、RC造のDs値ではなく低減されたSRC造のDs値(構造特性係数)を用いた計算不正な構造計算が行われています。

 貴社は、法令違反の設計が行われたマンションを販売された事実を認めますか?
 もし、認めない場合は、アンピール百年橋が法令違反でなく、適正な耐震強度を有していることを、構造計算書の該当箇所を示して具体的な説明をお願いいたします。

【質問2】アンピール百年橋は、1階鉄骨柱脚が非埋め込み形であり、1階の構造特性係数(Ds)をRC造の値としなければならないところ、SRC造として低減されたDsにて計算が行われています。貴社は、法令違反の設計が行われたマンションを販売された事実を認めますか?

 もし、認めない場合は、アンピール百年橋が法令違反でなく、適正な耐震強度を有していることを、構造計算書の該当箇所を示して具体的な説明をお願いいたします。


【質問3】アンピール百年橋の1階鉄骨柱脚は非埋め込形なので、1階鉄骨柱脚の鉄量は柱頭の鉄量と同等以上でなければならないと定められています。しかし、アンピール百年橋の1階柱脚の鉄量は柱頭の51%しかなく、規定に対して49%も不足した状態となっています。貴社は、アンピール百年橋の1階柱脚の鉄量が規定を満足していない法令違反の状態であることを認めますか?

 もし、認めない場合は、アンピール百年橋が規定を満たしていることを立証してください。

 この質問に対する新栄住宅・設計事務所・福岡市の回答は

新栄住宅からの回答

 設計事務所に確認したところ、当時の法令に則って適正に構造計算を行っており、違法性はない。行政の確認審査による確認済証ならびに完了検査による検査済証を受領しており、適切に計画されたものと考える。

設計事務所:群設計工房からの回答

 新栄住宅に報告しているので、直接の回答はしない。

福岡市建築指導部長からの回答

 確認申請書は保存年限を超えており廃棄されているが、建築確認当時の建築基準法の規定について審査を行い、適合を確認のうえ建築確認済証を交付したものと思われる。

 今回仲盛氏が明らかにしたのは、「耐震壁方向に鉄骨が配置されていない柱の鉄筋量が不足していること」である。

 非埋め込み型柱脚の鉄量が49%も不足し、柱の鉄筋量が全体で1584 本も不足していることは重大な欠陥である。

 以前仲盛氏からの質問に対する新栄住宅の回答は「行政の確認審査による確認済証ならびに完了検査による検査済証を受領している」、設計事務所の回答は「新栄住宅に回答済み」、福岡市の回答は「建築確認当時の建築基準法の規定について審査を行い、適合を確認のうえ建築確認済証を交付したものと思われる」となっている。


 仲盛氏によれば、

 行政による建築確認は「性善説」に基づいているので、虚偽の設計による確認申請を想定していません。1500 本を超える鉄筋が不足している設計を見落とす行政も如何なものかと思いますが、根本的な責任は不適切かつ違法な設計を行った設計者とマンション販売業者にあります。エンドユーザーであるマンション区分所有者は、マンションが適法な状態であることを前提とした価格で鉄筋不足・耐震強度不足のマンションを購入させられたのです。仮にマンションを売却するとしても、鉄筋不足・耐震強度不足のマンションが、売主が望むような価格で売れるはずはありません。

 鉄筋不足・耐震強度不足のようなマンションの重大な瑕疵は重要事項説明書に記載しなくてはなりません。瑕疵を隠して売却した場合には、売主は買主から契約解除や損害賠償を求められることになります。

 売却できないほど資産価値が減少した原因は違法かつ不適切な設計にあるので、区分所有者はマンション販売会社や設計事務所に対して、「マンションを適法な状態に戻せ」と求めるべきだと思います。もし、大地震が発生し、このマンションが倒壊するようなことがあれば、近隣の住人や建物などに被害を与えることになります。そうなれば、マンション区分所有者は加害者の立場となってしまいます。

 これは、先日提訴された「パークサンリヤン大橋」と同じことであり、訴訟に値するほど重大なマンション欠陥の案件です。他のマンションにおいて耐震強度不足や不適切な設計が判明した際に「マンションの欠陥が報道されたから売れなくなった」という声がありました。先ほども話したように、耐震強度不足や不適切な設計といったマンションの瑕疵は重要事項説明書に記載しなければならない事項であり、これを隠してマンションを売却することは言語道断です。マンションの瑕疵により資産価値を低下させたのは、瑕疵を指摘した者ではなく、不適切な設計を行った設計事務所と販売した業者であることも、重ねて述べておきます。「アンピール百年橋」の区分所有者は、自分たちの資産と生命を守るための行動を起こすべきではないでしょうか。

 また、違法かつ不適切な設計を行った建築士は建築士法第10条、38条、39条により懲役または罰金刑を受けると定められています。アンピールマンションの設計を行った設計者が、1500本以上も鉄筋が不足した設計を行っていながら正当化するのであれば、その設計者が関与した物件も同様の不適切な設計が行われている可能性が極めて高いので、調査を行い、その事実を公表したいと考えています。

 仲盛氏は上記のように話した。新栄住宅はアンピール百年橋以外にも多くのマンションを分譲しているので、鉄骨鉄筋コンクリート造のアンピールマンションを列記する。

 これらのマンションも同じ設計思想により設計が行われている可能性は否定できないのではないか。もし、新栄住宅が適法性を主張するのであれば、法的・工学的根拠を基に構造計算書の該当箇所を示しせば済むことなので、マンション区分所有者のためにも、ぜひ実行していただきたい。


(了)


【桑野 健介】

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