• 桑野 健介

傾斜した東区のマンション 住人の声


 NetIBNewsでは 23日、福岡市東区の傾斜した分譲マンション「ベルヴィ香椎六番館」の杭長などの調査が終了したことを報じた。また、4月6日~8日にかけて、このマンションが傾斜していることを知らされないまま購入したBさん一家のことも報じたところ、この記事を読んだBさんから編集部にメールが寄せられた。


 メールによれば、22日に調査報告の要約が住人に配布されたものの、新聞に記事が掲載されることは知らされていなかったという。新聞に掲載されたことについては、マンションの窮状を世間に知ってもらうことになるので賛成されている。また、傾斜している棟とは別の棟である壱番館の部屋が売りに出されているとのことで、「六番館の不具合や施工業者が同じであることなどを不動産仲介会社や管理会社が購入希望者に正確に伝えているのか?自分たちのような被害者となるのではないか?」と懸念されている。


 Bさんによれば、マンションの傾斜などの不具合とこれに関する販売側JV(若築建設・福岡商事・JR九州)との間で行われた協議や調停に対する六番館の区分所有者の関心は低いと言う。特別理事の方が一人で奮闘されているが、六番館の区分所有者の方たちの関心が低いので、経過報告や、テレビや新聞に取り上げられることも区分所有者にあまり報告されていないようだ。


 記者がベルヴィ香椎を取材して感じたことは、竣工から25年経過した同マンションでは、新築当時に入居した区分所有者の多くが高齢になっており、ほとんどの区分所有者が自分が住むマンションの安全性や資産価値について関心が薄いということである。


 長い間、孤軍奮闘されている特別理事や、マンションの不具合を知らされずに購入し 現在、不動産仲介会社を相手に調停中であるBさんなど一部の区分所有者だけが行動を起こされており、マンション全体としての動きになっていない。


 過去のマンションの裁判をみると、マンション管理組合や区分所有者全体での訴訟となれば、何かを決定しなければならない場面において毎回決議が必要となり、弁護士に対する原告全員の委任状を集めることも 大変な作業となる。



 このように マンション全体での裁判にはマイナス面も多いので、原告は少ない方が即断でき、裁判を優位に進めることが可能になるのではないだろうか。裁判が長引いて不利になるのは、資金が乏しい区分所有者側であり、資金に余裕があり、技術面での主張のためのスタッフもいるマンション販売会社やゼネコンなどは、時間を引き延ばす作戦を採る場合も多い。


 本サイトで何度も報じてきた久留米のマンションなどは、この典型であり、被告である鹿島建設の度重なる引き延ばしにより、実に6年もの歳月を費やした。原告である区分所有者たちは和解を勝ち取ったものの、6年間の裁判により疲弊したのも事実である。久留米のマンションの裁判においては、鹿島建設の手抜きが明らかになったが、鹿島建設は開き直っていた。裁判所も客観的に明らかな手抜き工事であっても、この責任を深く追求することはなかった。ここでも、ゼネコン有利・区分所有者不利という構図があった。


 これも本サイトで何度も報じていることであるが、東京の豊洲市場における日建設計による設計偽装に関して、仲卸業者が市場の使用禁止を東京都に求めた裁判においては、裁判所が一向に審理に入らず、無駄な時間だけが経過した。裁判が開始されたかと思えば、裁判長は1回目の口頭弁論において結審という暴挙に出た。これは 東京地裁が東京都に忖度したとしか考えられない前代未聞の暴挙であり、「裁判所は強者のゴールキーパーに過ぎない」ということを前提に考えざるを得ない事例である。

本来、法律は弱者のためであるべきだが、他の裁判の事例を見ても、司法は強者が有利となるよう運用しているようにも感じられる。しかし、三権分立の我が国においては、司法は毅然たる立場を貫くべきである。


 1戸の区分所有者が単独で訴訟をすることには速さ以外の利点もある。それは訴訟費用である。50戸で訴訟を起こした場合と1戸の区分所有者が訴訟を起こした場合とでは 細かい差を考えなければ訴訟費用は1/50である。

竣工間もない頃から多くの不具合が生じており、販売会社側JVやゼネコンとの協議が進められてきたベルヴィ香椎六番館について、販売会社側JVが未だに解決策を示していないことは 企業倫理が疑われる。これは世論も同じように企業倫理を疑うのではないだろうか。1戸の区分所有者が行動を起こし、結果が出れば、他の区分所有者も続くことが可能となる。まずは、1戸の区分所有者からでも速やかな行動を起こすことが肝要だと思われる。


【桑野 健介】

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