• 桑野 健介

傾斜マンション問題:ベルヴィ香椎の建替えは実現するか? 区分所有者たちに不満の声


 分譲マンション「ベルヴィ香椎 六番館」(福岡市東区)の傾斜問題に関し、販売会社である「JR九州」「福岡商事」「若築建設」の3社は「補修」「買い取り」「建替え」の3つの案を示し、830日に区分所有者に対して建替えに関する説明会を開催する予定であったが、急遽内容を変更し、補償に関する説明しか行われなかった。
 この説明会をめぐる動きについて、構造設計一級建築士の仲盛昭二氏(一級建築士)に話をうかがった。

 -六番館の建替え計画について、販売会社側は「福岡市の指示により6階までしか建てられない」として6階建ての計画を作成していたようですが、なぜか「福岡市が7階建てを認めたので、説明する計画案をつくり直す」との理由により全体管理組合への説明を延期しました。



 仲盛 ベルヴィ香椎は複数の棟から構成される団地としての認定を受けているため、建ぺい率・容積率や接道義務などについて、棟ごとではなく団地全体として計画しています。従って、団地のうちの1棟のみを建て替える場合には、団地として認定を受けている条件が崩れるため、団地としての認定そのものが成立しなくなります。それゆえ、福岡市が団地の条件において建築可能な階数は6階と回答していたものと思われます。突然7階建てが認められた理由については、後日福岡市に確認したいと思います。


 -事前に六番館の区分所有者に対するアンケートが行われ、建替え案への賛同者が多い状況ですが、六番館の区分所有者のなかで佐々木特別理事が進める方針に異議を唱える人が増えているようです。


 仲盛 販売会社側が示した条件として、建替えの場合、引越料2回分、仮住まい費用、迷惑料などが示されていますが、迷惑料には40~500万円の幅があり、部屋ごとに調査・査定をするということであり、査定に納得しない区分所有者が出ることが想定されます。部屋に立ち入る調査に嫌悪感を抱いている区分所有者もいると聞いています。


 -建替え決議は、10月11日午前に六番館総会にて建替え決議(5分の4以上の決議)、同日午後に全体管理組合総会にて建替え承認決議(4分の3以上の承認決議)が行われる予定です。


 仲盛 佐々木特別理事ら六番館理事会が六番館区分所有者に配布した資料には、「六番館で5分の4以上の建替え決議ができなければ、他の棟への説明、建替え承認決議(4分の3以上)などすべてが必要なくなる。無意味な説明会や総会はマンション内が混乱します」と、六番館の区分所有者に圧力をかけているような記載があります。佐々木特別理事が目指す方向も区分所有者を誘導しているように感じられます。


 -六番館区分所有者からは「棟総会前に棟理事会が特定の案を決めるのは正しい運営ではない」「棟理事長名でない文書は ただの私文書に過ぎない」と、厳しい意見が出ています。

 これら六番館区分所有者からの厳しい意見に対し、佐々木特別理事は「棟理事会としては、方向性もないのに総会を開くことはできない」「意見交換会を開きたいが新型コロナの関係で、文書で進めている」と回答しています。


 仲盛 佐々木特別理事の回答は新型コロナウイルスを口実としていますが、大人数の集会を開催しなくても、区分所有者の意見を聞く方法はいくらでも考えられるはずです。佐々木特別理事の考えと異なる意見が多く出ることを避け、独善的に進めたいという意図が強く感じられます。


 -六番館の区分所有者へのアンケートでは「建替え」を希望する方が多いようです。


 仲盛 竣工後25年を経過したマンションを新しく建て替えるのですから、区分所有者にとっては受け入れやすい解決案かもしれません。しかし、販売会社側から示された補償の内容について不満の声が多いと聞いています。5分の4以上の建替え決議を得られるのかという疑問は残ります。


 -なぜ、販売会社側は低い補償額しか提示しないのでしょうか?


 仲盛 ベルヴィ香椎六番館は、竣工から20年以上経過しており、除斥期間(時効的なもの)を過ぎています。そのため、販売会社側には「話がこじれれば、いつでも開き直れる」という腹積もりがあると思います。


 -六番館の建替えが5分の4以上で決議されたと仮定して、団地全体の4分の3以上の承認決議は得られるでしょうか?


 仲盛 以前も話しましたが、六番館以外の棟においても、構造スリットが施工されていません。この欠陥を是正しなければ、地震が発生した場合に必ず被害を生じます。六番館の杭長だけを理由に建て替えるのではなく、他の棟も含めて、構造スリットまで含めて是正をするよう販売会社側に求め、是正工事を実施させるべきです。


 特別理事の佐々木氏や岩山建築士が、なぜ、六番館以外の棟の構造スリットについて、販売会社側と交渉を行わなかったのか不思議に思います。団地としてのマンション全棟について最善の解決策を見出すべきなのに、佐々木特別理事や岩山建築士には 六番館だけの問題として終わらせようとする姿勢が強く見られ、残念に思います。


 六番館の建替えだけで済ませれば、他の棟の区分所有者は、永久に欠陥を是正する機会を失うのです。その結果は、地震が発生した際に身を以って知ることになります。


 -六番館の佐々木特別理事は、これまで、テレビ局や新聞社に積極的に公開し報道をさせていましたが、8月30日は報道陣をシャットアウトしました。これはどういう意図があったと思われますか?


 仲盛 報道されては不都合なことがあったのでしょう。西日本新聞の記事には表面的なことしか書かれていません。これは佐々木特別理事たちが情報を公開しなかったからです。六番館の区分所有者から佐々木特別理事たちに対する批判的な意見が出ており、それらを報道陣に知られたくないのだと思います。


 -六番館の建替え決議と団地全体の承認決議が済めば、スムーズに建替えへと進むのでしょうか?


 仲盛 もし 六番館の建替え決議と全体の承認決議が成立したとしても、建替えは不可能です。なぜなら、法的に認められない状況があるからです。


 -以前、仲盛さんは、ベルヴィ香椎の六番館とそれ以外の棟も含めて構造計算に問題があると指摘されていました。


 仲盛 私なりに検証をし、構造計算の不備を把握したので、特別理事の佐々木氏に「管理組合が保管している六番館の構造計算書を確認したほうが良い」と助言しました。佐々木氏からは「構造計算書を探したが無かった」と返事がありました。


 しかし最近、区分所有者の方からの情報により、六番館の構造計算書が存在したことが明らかになりました。なぜ、佐々木特別理事は「六番館の構造計算書はない」と嘘をいったのでしょうか?それは、構造計算書を検証することによりその計算の不備が判明すれば、六番館以外の棟の構造計算も検証しなければならず、その結果、六番館だけの問題で済まされなくなるからです。

 

 他の棟を置き去りにして六番館の建替えのみを争点に販売会社側と交渉してきた佐々木特別理事にとって、すべての棟の建替えとなれば、販売会社側が逃げるしか選択肢がなくなるので、六番館の建替えだけで早く合意したかったに違いありません。


 -六番館を建て替えたとしても、他の棟に構造スリットや構造計算の問題が残った状態になりますね。


 仲盛 建物が合法であることが行政判断の前提条件ですから、団地として認定された数棟のなかに、違法状態の建物があれば、団地の認定にも影響します。これらは、構造計算書と図面を見れば判断できるので、建替え決議の前に確認しておかなければ すべてが無駄になってしまいます。


 佐々木特別理事は「福岡市が建替えを承認した」と言っていますが、違法建築物が存在することを前提に福岡市が承認したという公文書があるはずなので、その公文書を開示すべきだと思います。


 -すべての棟の問題となった場合、販売会社側の負担は相当に大きくなりますね。


 仲盛 先ほど話したように、ベルヴィ香椎は竣工から20年の除斥期間という、いわば時効的な期間を過ぎています。販売会社側は安全地帯にいるので、いつでも開き直ることが可能であり、このことを認識しているから区分所有者に不利な条件を強気で提示しているのです。販売会社側は、ベルヴィ香椎の内部でもめることを望んでいるのです。


 -六番館以外の棟の区分所有者としては、大きな欠陥が問題となっていた六番館が建替えられ適法な状態となった場合、今度は、六番館以外の棟が違法状態として残されることになるのですか?


 仲盛 六番館だけの建替えが決議され、全体の4分の3以上で承認され、六番館が建替えられれば、当然、六番館以外の棟は違法状態として残されることになります。六番館以外の区分所有者が、このことをわかっていながら六番館の建替えを承認するとは考えられません。


 六番館の区分所有者としても、部屋ごとに迷惑料の査定をされるのですから、販売会社や佐々木特別理事らに対する不満が爆発すると思います。


 客観的に見ると、佐々木特別理事の不手際により、販売会社側の思惑通りに進んでいるように感じられます。佐々木氏が全体の管理組合の理事長に就任するという話も聞いています。全体の管理組合の理事長に就任することにより、これまでの不手際が明るみにならないようにしようとしていることは推察できます。


【桑野 健介】

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